コンビニエンスストアは、音で満ちている。
コンビニ人間 より
という一文から始まるこの作品は、常に聴覚を刺激される描写が魅力的でした。
コンビニのなかで決して止むことのない繊細な音の描写。
それらに私の想像は掻き立てられました。
また、Audible版では大久保佳代子さんの朗読が、無機質な雰囲気と絶妙にマッチしています。
さらに、本作の描写の繊細さは、聴覚だけでなく、心の中も刺激してきます。
私はストーリーを深く理解したくなり、結局、Kindle版もダウンロードしました。
『コンビニ人間』を手に取った理由
私が本作を手に取った理由は、主に3つあります。
- 謎めいたカバーに惹かれた
- 多くの人に読まれている話題作だった
- “なんとな~く呼ばれるように”という直感的な感覚
ちなみに、本書のカバーは金氏徹平氏の作品です。
これには、我が家の10代の娘ふたりも「これは何の絵?」と興味津々でした。
好奇心を満たしたくなった私は検索を始め、アートフロントギャラリーに掲載されている金氏徹平氏のページにたどり着きました。
そして、その内容を見て、納得したのでした。
現代社会で再生産され続ける情報のイメージを、リズミカルに反復と増幅を繰り返し展開させることで注目を集める。個々の物体が持つ本来の意味が無視されて繋げられることで、思いもしなかったダイナミックな表現がもたらされている。
アートフロントギャラリー より
このように人目を惹くこのデザインは、本の内容を裏切ることなく、本の顔を飾っているなぁと感じます。
マジョリティとマイノリティの視点
主人公の恵子は36歳未婚で、大学卒業後も就職せず、18年間同じコンビニで働き続けています。
この一文を読んだ人は、恵子にどんな印象をもつでしょうか。
- なにか事情があるのかな?
- なぜ就職しなかったのか?
- なぜずっと同じコンビニ?
相手に抱く「なぜ?」は、多くの場合、マジョリティの常識とのズレから生まれるものです。
故に、マイノリティの側に立つと、「なんで?」の質問攻めに遭う機会が増えます。
現に私自身、自閉症スペクトラム&不登校姉妹の母として、無遠慮な「Why?」を受けてきました。
- なんで娘ちゃんたちは学校に行けなくなったの?
- なんでマスクを着けないの?
- なんで昼間にお母さんと一緒に買い物してるの?
他者にとっては不思議な光景なのかもしれません。
しかし、私たち親子にとっては日常であり、普通なのです。
ここで、やや過激な白羽さんのセリフを引用します。
「皆が足並みを揃えていないと駄目なんだ。何で三十代半ばなのにパイトなのか。何で一回も恋愛をしたことがないのか。性行為の経験の有無まで平然と聞いてくる。『ああ、風俗は数に入れないでくださいね』なんてことまで、笑いながら言うんだ、あいつらは!誰にも迷惑をかけていないのに、ただ、少数派というだけで、皆が僕の人生を簡単に強姦する」
『コンビニ人間』より
やはり、白羽さんの発言は過激ではありますが、私は共感できる部分もありました。
皆さまはいかがでしょうか。
倫理観と“普通”の問い
恵子の幼少期には、公園で死んだ小鳥を手に取り、「これ、食べよう」と言う描写があります。
周囲の大人は「かわいそう」と泣きじゃくりますが、恵子の視点ではそれが自然です。
皆口を揃えて小鳥がかわいそうだと言いながら、泣きじゃくってその辺の花の茎を引きちぎって殺している。
『コンビニ人間』より
私は恵子の視点から、マイノリティの葛藤を感じました。
さらに、このような描写が続きます。
小鳥は、「立入禁止」と書かれた柵の中に穴を掘って埋められ、誰かがゴミ箱から拾ってきたアイスの棒が土の上に刺されて、花の死体が大量に供えられた。「ほら、ね、恵子、悲しいね、かわいそうだね」と母は何度も言い聞かせるように囁いたが、私は少しもそうは思わなかった。
『コンビニ人間』より
この場面からは、“人間の普通”や倫理観とは何かを考えさせられます。
また、花や虫に対する価値観の違いも描かれ、何が“正常”で何が“異常”かは、人によって異なるという現実を突きつけられました。
まとめ|村田沙耶香『コンビニ人間』の魅力
村田沙耶香さんの『コンビニ人間』は、とても読み応えのある、また、咀嚼しがいのある一冊でした。
Audible版の朗読が内容と見事にマッチしていて、読書が苦手な方でも耳で楽しめます。
- 読書が苦手
- マイノリティや生き方に悩む
- 物語を耳で深く味わいたい
そんな方にぴったりの一冊になるかもしれません。

もりー
最後までお読みくださりありがとうございました☆