ヘビーな内容の本を立て続けに聴いていた8月。
“そろそろ軽めの本に移行しようかな・・・”と思い立ち、いくつかの書籍に触れてみたものの、しっくり来る本となかなか出会えずにいました。
そんな中で出会ったのが、賀十つばささんのご著書、バニラシリーズ。Audibleで聴き始めてまもなく、私はストーリーの中に没入していきました。
というわけで、今回は賀十つばささんのバニラシリーズの読書感想を書いてみようと思います。
お菓子をたっぷりと感じながら心癒される『バニラな毎日』
「Recipe1 最後のガレット・ブルトンヌ」と始まる『バニラな毎日』は、この見出しからお菓子の世界に引き込まれていきます。
そして、この書籍はお店の閉店が決まったところからストーリーが始まるのです。
“ガラガラガラ。濃紺な夜空の下、私は店の正面シャッターをおろした”というふうに。
ガラガラガラという擬音語から、私は勝手にシャッターが開く様子と、そこから見える青空を勝手に連想していました。(自身の先入観にウンザリする)
だからこそ、『濃紺な夜空の下』『正面シャッターをおろした』という予期せぬワードが、一気に私を惹きつけたのかもしれません。

え。濃紺な夜空?シャッターをおろした?!
という感じで。
ここで一旦、Audibleのサイト上に書かれているあらすじを引用させていただきます。
閉店が決まった洋菓子店で、なぜか店主と常連客のマダムがお菓子教室を始めることに。生徒はあなた一人だけ。参加条件は悩みがあること。一歩踏み出す勇気が持てない会社員にはタルトタタン、過保護で心配性な母親にはイートン・メス、失恋ばかりして落ち込む男性にはザッハトルテ……。あなたの悩みを解決する、美味しい人生のレシピ教えます。
Audible版『バニラな毎日』より
脳内がお菓子の良い香りで充満して満たされる
書籍を読むと感情を揺さぶられることは多々ありますが、嗅覚を刺激されることは少ないように思います。
この書籍の面白いところは、とにかく嗅覚が刺激を受けることです。
実際には何の香りもしませんが、長年のあいだに培われてきた香りの記憶が、次から次へと開くのです。
焼き立ての香ばしい香り・・・キレイなきつね色のお菓子・・・。
私の場合、お菓子が食べたくなる、というよりも『焼きたくなる』という衝動に駆られました。
思わずレシピを開き、「どれを焼こうかな」と前のめりな姿勢になったところで、お菓子焼きたい欲は消失。(えっ)
パタンとレシピ本を閉じた、気持ちの変化は謎のままです。
その後も私は耳からお菓子の情報をスポンジのごとく吸収しまくり、バニラな毎日の世界観にどっぷりと浸かりました。
あ~、楽しかった!
人の悩みに効く処方箋的な書籍|何かに似ている・・・『大事なことほど小声でささやく』だ!
森沢明夫さんのご著書『大事なことほど小声でささやく』は、私が大好きな書籍のひとつ。
こちらも「人の悩みにピッタリなカクテルを出す」というストーリーで構成されています。
この悩みにはコレ!という感じで、お菓子やカクテルを出すあたりが、まるで処方箋のよう。それも副作用がない、とっても優しい薬のようです。
お菓子にしてもカクテルにしても、それが選ばれている理由が奥深く、「なるほど」と思わず膝を打ってしうような感覚になります。
『バニラな毎日』で特に印象的だったのは、Recipe3のイートン・メスでした。
カウンセリングに通う中学生のゆあんちゃんと、ゆあんちゃんのお母さんが一緒に作ったのが、イートン・メス。
私はイートン・メス自体を知らなかったのですが、見た目が美しいマカロンに対し、イートン・メスはどうやら、作ったメレンゲをぶっ壊すお菓子らしい。
本文中ではこんなやり取りが繰り広げられています。
佐渡谷の姪でカウンセラーの明日香:
「頑張って探さないほうが、イートンメスみたいに素敵なものに出会える気がするわ。探すというのはフォーカスすることで、ペンを探してればペンしか見えなくなるでしょう?でも、引いた目線で広角レンズでボンヤリしてると、色々なものが見えてペンの後ろにある意外なものが目に飛び込んで来るんじゃないかしら?」
ゆあんちゃんのお母さん:
「私はずーっと、ペンだけを探し続けている人生だった気がする。偏差値でいける学校探して、入れそうな大学探して、向いてる仕事探して、苦労しなそうな結婚相手探して、子どもを産むのに安心な病院を探して、今は子どもが幸せに生きられる道を探してる」
ゆあんちゃん:
「きれいなマカロン作ろうとそればっか考えてたら、ぶっこわすが面白いって気づくのはけっこう難しいと思う!」
視野狭窄に陥り、自分の考え方や価値観だけを盲信してしまうことは、誰にでもあるのではないでしょうか。
程度の差こそあれ、ひとつのものを盲目的に探し続けてしまうことは、誰にでもきっと、ある。
そのような状態に陥っている人に対し、言葉で説教するのではなく、“お菓子”や“カクテル”というものを通してメッセージを渡す・・・うーーーん、かっこいい!!
そのお菓子やカクテルを良く知っている者だけがなせる技ですね。
ひたすらに憧れます。
【Audible】賀十つばささんの『バニラなバカンス』 はあたたかい人間模様を感じ、心安らぐ一冊
『バニラな毎日』を聴いてしまったら、『バニラなバカンス』を聴かずにはいられなくなります。
なぜなら、『バニラな毎日』の続編だから。(単純)
そしてなんと、続きであるこの書籍も“ガラガラガラ”から始まるのです!
もう、情景が浮かびまくり、心を掴んで離してはくれません。笑
そして、1冊目の『バニラな毎日』と大きく異なる点は、恋模様が描かれているところです。
色恋沙汰は皆無というキャラクターの白井さんにも、それっぽいことが起こるのです!
菓子生活一筋!という白井さんの心の揺れは、読者側の心も同時にほぐしてくれるような感覚にしてくれました。
『バニラな毎日』の登場人物たちが再登場
事故に巻き込まれ、どん底に落ちてしまう白井さん。
そんな白井さんのもとに、1冊目の『バニラな毎日』の登場人物たちがお見舞いにやってきます。
まさに、「忘れた頃にやってきた」状態。
“あ~!いたいた!”という感覚と共に、1冊目の登場人物たちが蘇ってきました。
白井さん的には「頼まれて受けたしごと」という感覚だったのかもしれませんが、“白井さんのお菓子がたくさんの人を救ってきたのだなぁ”ということを改めて思い起こすキッカケとなり、心が和みます。
『バニラなバカンス』で起こる事故は1件では終わらないのにもかかわらず、悲観的な感じがしない理由はまさにコレだと思います。
持ちつ持たれつの豊かな人間関係
これについては現実世界でもまったく一緒で、小説のような運びにはならないかもしれないけれど、豊かな人間関係が自分も相手も救うことは間違いありません。
それも、いやらしさのない、日頃から交わされている持ちつ持たれつの関係性。
そんな人間関係を築けているだろうか?と考えつつ、浮かんでくる家族友人に感謝するのでした。
ナレーター:岸本百恵さん|Audibleの朗読が最高!
私がAudibleを好む大きな理由のひとつは、ナレーターの方による朗読です。
今回ご紹介した2冊のナレーターは、岸本百恵さんです。
声で表現された心理描写は、共感度が爆上がり!
「わかる、そうなるよね・・・笑」と、ひとり笑ったりニヤけたりと、とても愉快な気持ちにさせてもらえます。
岸本百恵さんの朗読、最高でした!!
まとめ|ここまでお読みくださった皆様へ
今回は賀十つばささんの『バニラな毎日』と『バニラなバカンス』の読書感想を書いてみました。
賀十つばささんワールドに浸かりたい!とご希望される方には、ぜひ2冊セットでお読みいただけるのが良いのでは?と思っています。
そして、目で楽しむ読書はもちろんのこと、Audibleではまた違った楽しさがあります!
洗い物をやりながら、歯を磨きながら、お風呂に入りながら・・・これはすべて私のことですが、こんな時間をAudibleに当てて、私は日々楽しんでいます。
※ちなみに、料理中はAudibleはあまり聴きません。ストーリーに没入しながらの料理は、私にはできないからです。

もりー
というわけで、最後までお読みくださりありがとうございました!