アルケミストは、正直に言うと、少し読みにくい作品でした。

だからこそ、これまでオーディブルで一度や二度聴いただけでは、うまく言葉にできるほど感想がまとまりませんでした。

  • なんとなく心に残るものはある。
  • けれど、それが何なのかを掴みきれない。

そんな感覚のまま、ずっとぼんやりとしていたのだと思います。

今回、初めて文庫本でじっくり読み進めたことで、ようやく「自分は何を感じていたのか」を少しずつ言葉にできるようになりました。

それでも、まだうまく整理しきれているわけではありません。

読み終えた今も、この物語の意味をぼんやりと考え続けているような感覚があります。

だから今回は、完成された感想というよりも、今の私が『アルケミスト』を読んで心に残ったことを、そのまま素直に書いてみようと思います。

\ながら聴きで学ぶ/オーディブルで聴いてみる

満たされているのに満たされない理由

年を重ねるにつれて、夢を抱くことから少しずつ遠ざかってしまう。

そんな感覚を抱くことがあります。

今はむしろ、「無理に夢を持たなくてもいい」という空気の方が強いのかもしれません。

そして、私自身もまた、その考えにどこか納得しているひとりです。

  • これ以上を求めなくても、それなりに生きていける。
  • 大きな挑戦をして傷つくくらいなら、穏やかで無難な人生の方が安心できる。

多くの人が、そんな価値観の中で生きているように感じます。

そして、それ自体が悪いことだとも思いません。

むしろ、そう思えるほど日本は平和で豊かな国になった、とも言えるのでしょう。

けれどその一方で、満たされているはずなのに、どこか満たされない。

そんな感覚を抱えながら生きている人も、少なくないように感じます。

夢や希望を語ることが、どこか現実離れして見えてしまう。

挑戦するより、現状維持を選びたくなる。

平和な時代だからこそ、失敗しないことに価値が置かれるようになったのかもしれません。

でも、

一度きりの人生、私は本当にこのままで良いのか?

『アルケミスト』は、そんな問いを投げかけてくる作品でした。

夢を追うことだけを肯定する物語ではありません。

むしろ、

「自分は何を望んでいるのか」を見失いながら生きる現代人に対して、立ち止まる時間を与えてくれる。

そんな、現代版ワークライフバランスの本質にも通じる一冊だと感じました。

“油”と“宮殿”が示す人生のバランス

賢者が少年に二滴の油が入ったティースプーンを渡し、

賢者

宮殿の中を歩き回る間、このスプーンの油をこぼさないように持っていなさい

と告げる場面があります。

二時間後、賢者のもとへ戻った少年に、賢者は尋ねます。

賢者

宮殿の様子はどうだったかね?

しかし少年は、油をこぼさないことばかりに気を取られていたため、

少年

実は何も見ませんでした。

と答えました。

そんな少年に対し、賢者はこう言います。

賢者

では戻って、わしの世界のすばらしさを見てくるがよい

ほっとした少年は、再びスプーンを手に宮殿を見て回ります。

今度は壁の装飾や庭園、美しい景色をしっかり味わうことができました。

けれど再び賢者の前に立ったとき、スプーンの油はなくなっていました。

油がない……

その少年に対し、賢者はこう語ります。

幸福の秘密とは、世界のすばらしさを味わい、しかもスプーンの油のことを忘れないことだよ。

アルケミスト より

この場面は、現代でいう“ワークライフバランス”にも通じるものがあるように感じました。

目の前の責任ばかりに意識を向けていると人生の楽しみや豊かさを見失ってしまう。

反対に、楽しさだけを追い求めれば大切な責任を落としてしまう。

「油」と「宮殿」です。

どちらか一方ではなく、その両方を抱えながら生きること。

このエピソードは、“やるべきこと”と“人生を味わうこと”のどちらも大切にする生き方を示しているように思いました。

当たり前のことのようでいて、実践するのはとても難しい。

だからこそ、この言葉は深く心に残ったのだと思います。

アルケミストの「マクトゥーブ」とは|運命と努力について考えたこと

物語の中で何度か登場する「マクトゥーブ」という言葉。

これは、“書かれている”という意味を持つそうです。

私はこの言葉を、「人にはそれぞれ運命の流れのようなものがある」という感覚として受け取りました。

  • 叶うものは、叶う。
  • 叶わないものは、叶わない。

けれどそれは、

「流れに身を任せていれば自然とうまくいく」

とか、

「どうせ決まっているのだから努力しても無駄」

というような極端な話ではないと思うのです。

願いに向かって
歩き続けることは必要。

迷いながらも、自分で選び、行動し続けることは欠かせない。

でもその一方で、すべてを自分の力でコントロールしようとしすぎないこと。

巡り合わせや、思いがけない流れを受け入れる“余白”のようなものも、大切なのではないか。

少し強引かもしれませんが、私の中ではこの言葉は、

  • 為せば成る 為さねば成らぬ 何事も

という言葉と、

  • ハクナ・マタタ

掛け合わせたようなイメージにも近いです。

  • 努力はする。
    でも、
  • 必要以上に人生を抱え込みすぎない。

その絶妙な力加減こそが、人生を生き抜く知恵なのかもしれません。

時代が変わっても、『アルケミスト』が読み継がれているのは、こうした普遍的な生き方のヒントが散りばめられているからなのだろう、と感じました。

少し強引でしょうか。笑

でも、いつの時代も通用する生き方のヒントのような気がしてなりません。

人生について考えさせられた言葉たち

ここからは、物語の中で特に心に残った、“普遍的な真理”を感じた言葉をご紹介します。

「近づきすぎない愛」という考え方

「わしのいる場所からは」と太陽が言った。

「大いなる魂を見ることができる。それはわしと連絡をとり合って、共に植物を育て、羊に日陰を探させるのだ。わしのいる場所を通してー地球からはずっと遠くなのだがーわしは愛し方を学んだ。もし、わしがここから少しでも地球に近づくと、地球のすべての生きものは死に絶え、地球の大いなる魂は存在できなくなってしまうことを、わしは知っている。だから、われわれはお互いを思いやっているのだ、そしてお互いを必要としている。わしは地球に生命とぬくもりを与え、地球はわしに生きてゆく理由を与えているのだ」

アルケミスト より

この言葉は、人間関係にもそのまま通じるように感じました。

どれだけ大切な存在同士であっても、距離感を間違えてしまえば、その関係は苦しくなってしまう。

近づきすぎることで、相手を傷つけたり、自分自身を見失ったりすることもあります。

「必要としていること」と、「適切な距離を保つこと」は、両立できる。

太陽の言葉は、そんな静かな真理を教えてくれているようでした。

そしてもうひとつ印象的だったのは、

地球はわしに生きてゆく理由を与えている

という部分です。

人は誰かを支えているようでいて、実は自分自身もまた、誰かや何かによって生かされている。

そんな“相互性”のようなものも感じました。

「自分にしかできない役割」とは

鉄は銅と同じになる必要はなく、銅は金と同じになる必要もないとも大いなる魂は言っていた。それぞれはかけがえのない存在として、それ独自の役目を果たしている。

アルケミスト より

この言葉を読んで、「自分の役目とは何だろう」と改めて考えました。

役割というと、何か大きな使命のように感じてしまいます。

けれど本当は、もっと小さな日常の中にこそ、その人の役目は存在しているのかもしれません。

今の私は、子どもたちの健やかな成長を支えること。

安心して過ごせる居場所をつくること。

それもまた、自分に与えられた役目のひとつなのだと感じています。

他人のようになろうとするのではなく、「自分にしかできない役割」を見つけていく。

その積み重ねが、人生なのかもしれません。

少年が語る愛|自分が変われば世界も変わる

愛とは砂漠のように動かないものではないからです。また、風のように動きまわるものでもありません。愛は、あなたのように、すべてのものを遠くから見守っていることでもありません。愛とは、大いなる魂を変え、より良いものにする力なのです。~中略~大いなる魂もまた、他の創造物と同じであり、情熱も持っていれば争いもするということがわかりました。大いなる魂を育てるのは、私たちなのです。そして、私たちが良くなるか悪くなるかによって、私たちの住む世界は良くも悪くもなります。そして、そこで愛の力が役に立つのです。なぜなら、私たちは愛する時、もっと良くなろうと必ず努力するからです。

アルケミスト より

この言葉は、とても強い力を持っているように感じました。

特に印象に残ったのは、「愛とは、自分自身をより良い方向へ導こうとする力である」という部分です。

ここでいう“変わる”とは、無理に別人になることではないと思います。

  • 物事の見方や、世界の受け取り方が少し変わる。
  • その結果として、自分の行動や言葉も変わっていく。

そんな穏やかな変化のことを指しているように感じました。

世界を変えようとする前に、まず自分自身の在り方を見つめること。

その積み重ねが、巡り巡って世界を少しずつ変えていくのかもしれません。

何度も読み返しながら、ゆっくり咀嚼したくなる言葉でした。

『アルケミスト』を読んで考え続けていること

『アルケミスト』は、「自分はどう生きたいのか?」という問いを投げかけてくれる物語でした。

答えのない道を歩いているように感じる今だからこそ、私はこの作品に励まされたのだと思います。

叶うのかどうかもわからない。

それが正解なのかもわからない。

それでも、自分で選んだ道を歩いていく。

そんな心構えを、改めて持たせてもらえた気がしました。

今回はAudibleと文庫本の両方で作品に触れたことで、聴覚と視覚の両方から物語を味わうことができました。

とても贅沢な読書体験だったと思います。

ご興味のある方は、ぜひ一度『アルケミスト』を手に取ってみてください。

Audibleでは、今回ご紹介した作品を含む12万冊以上の作品が聴き放題で楽しめます。

最後までお読みくださり、ありがとうございました☆