町田その子さんの蛍たちの祈りを、オーディブルで2回聴きました。
最初に感じたのは、“これは軽い気持ちでは触れられない作品だな”ということでした。
日々の生活の中で、私たちはなるべく「しんどいもの」から距離をとろうとします。
明るいもの、前向きなもの、元気になれるもの。
そういったものを無意識に選びがちです。
それでも、この作品から私は離れられませんでした。
決して楽しい話ではない。
むしろ、人の感情の奥にあるものや、この世界の厳しさを突きつけてくるような内容です。
それなのに、なぜか2回も聴いてしまう。
そして聴き終えたあと、著者の言葉の数々を咀嚼し続けてしまう。
重たいのに、どこか美しい。
苦しいのに、目をそらしたくならない。
そんな読書体験となりました。
『蛍たちの祈り』は重たいのに、なぜか忘れられない
読み進めるうちに、ただの物語では終わらないと感じていきました。
憎しみと罪が描かれる物語
この物語には、強い感情が描かれています。
死んでほしい、と願うほどの憎しみ。
そして、その感情が実際の行動にまで及んでしまう現実。
さらに、保身のために犯してしまう殺人。
どれも、目を背けたくなるようなものばかりです。
それでも美しいと感じた理由
それでも、この作品にはどこか美しさがあります。
町田その子さんの描く情景は、とても繊細でやわらかく、重たい出来事の中にも光を感じさせてくれます。
ただ暗いだけでは終わらない。
そのバランスが、この作品を輝かせているのだと思います。
この世界の理を考えさせられる
物語の中で描かれているのは、人の感情だけではありませんでした。
便利さと引き換えに失われるもの
どんどん便利になり、多くの選択肢をもてるようになった現代。
それなのに、どこか物寂しく、満たされない感覚を抱えている人も多いように感じます。(自分自身も含めて)
これ以上の豊かさはないのでは?と思う一方で、ヒトはさらに多くを求め続けている。
そんな矛盾を、この作品は映し出しています。
生活が便利になるにつれて、蛍も減ったのよ。
『蛍たちの祈り』より
何かを手に入れたら、何かがいなくなる。
ひとの望む豊かさと、自然の共存はとても難しい。
豊かさとは何かという問い
何かを手に入れたら、何かがいなくなる。
とてもシンプルな言葉ですが、深く考えさせられます。
人にとっての豊かさとは何か?
これからの私たちは、何に心を震わせ、何に心を満たされながら生きていくのか?
そんな問いが残ります。
こどもを愛せる親ばかりではない現実
特に心に残ったのが、親子関係の描かれ方です。
道徳だけでは割り切れない現実
この作品には、親子の問題が描かれています。
親殺しや虐待といった、簡単には受け止めきれない現実。
「してはいけないこと」だけでは説明できない現実が、この世界にはある。
その重さを、改めて考えさせられました。
一方で、子どもは違います。
逃げられない子どもの苦しみ
誰かに護られなければ生きていけない存在であり、簡単に逃げることもできません。
愛情を求めながら、同時に恨みも抱えてしまう。
その複雑さに、言葉を失いました。
子どもは、無条件に親を愛します。
そういう風にできている。
愛されなくても、傷つけられても、しあわせを奪われても、求めるようになってる。
子どもには、拒否という選択肢はないんです。
本書より
この言葉が、とても強く残りました。
それでも人は誰かに救われる
この物語は、人の闇だけで終わるわけではありません。
どん底にいる人の前に現れる、誰かの存在。
絶望している人に、手を差し伸べる人が現れます。
人生の見え方を変える考え方
絶望の中にいても、人は誰かとの関わりの中で、少しずつ前に進んでいくことがあります。
とはいえ、小説のようにうまくいくわけではないかもしれない。
それでも、「そういう可能性もある」と思えるだけで、見える景色は変わってくる気がします。
無理だと思いながらも、あがき続けること。
それはきっと、決して無意味ではないのだと思います。
投げやりになってしまう日もあるし、自暴自棄になってしまう瞬間もある。
それでも、どこかで希望を手放さずにいられる自分でありたい。
この物語を通して、そんなふうに感じました。
オーディブルで味わう『蛍たちの祈り』
今回、私はこの作品をオーディブルで聴きました。
声で語られることで、感情の揺れがより伝わってきます。
文字だけでは気づけなかった部分にも、自然と意識が向きました。
そして、オーディブルは日常の中で取り入れやすいのも魅力です。
洗い物や身支度をしながらでも、物語に触れることができる。
少し気が重い時間も、「聴ける時間」に変わることで、気持ちが軽くなります。
問いが残る一冊『蛍たちの祈り』
『蛍たちの祈り』は、決して軽い作品ではありません。
それでも、読み終えたあとに残るのは、重さだけではありませんでした。
この世界のあり方や、人の感情。
普段はどこか距離を置いているようなことに、ふと立ち止まって向き合う時間をくれる一冊でした。
何かを感じたいとき。
少し立ち止まって、自分の内側を見つめたいとき。
そんなときに、心に残る作品かもしれません。

もりー
最後までお読みくださりありがとうございました☆