町田その子さんの『月とアマリリス』をオーディブルで聴きました。
ぐぐぐーっと、心の奥へと入り込んでくる物語。
読み終えたあと言葉にし尽くせない感情が残り続け、思い浮かんだ言葉たちを、とにかく手帳に書き出しました。
この作品は、「贖罪とは何か」という問いと、人は人の中で傷つき、人の中で救われる、という現実を突きつけてきます。
今回は、そんな『月とアマリリス』を通して私が感じたことをまとめてみます。
贖罪とは何か|終わりの見えない問い
この作品を通し、
と改めて深く考えました。
そしてこの問いから、なかなか離れることができませんでした。
贖罪に終わりはあるのか
ライターをしている主人公・飯塚みちるは、ある仕事を通して人を深く傷つけてしまった過去を抱えています。
その後のみちるは、どの仕事においても「それは贖罪になるのか」を考え続けます。
しかし、罪を償うことに明確な終わりはありません。
どれだけ償おうとしても、被害者の傷が癒える保証はないからです。
終わらない問いを抱え続ける苦しさ
「贖罪」という言葉はよく使われますが、実はとても曖昧で、実体のない行為なのかもしれません。
終わりが見えないからこそ、加害者は問い続けるしかない。
その苦しさと向き合い続けること自体が、ひとつの贖罪のカタチなのかもしれません。
「償う」という行為の曖昧さ
贖罪とは、
と感じました。
それは決して綺麗なものではなく、とても個人的で、揺らぎ続けるものなのだと思います。
善意が人を傷つけるとき|避けられないすれ違い
「人のために」という善意でとった行動が、思わぬ結果を招くことがあります。
この物語は、その“どうにもならなさ”にも着目しているように感じました。
なぜ善意はすれ違うのか
善意がまっすぐ伝わらなかったとき、人は自分の行いを「失敗」として受け止めることが多くあると思います。
そして、自らを責めてしまうことや、「受け取ってもらえなかった」という被害妄想に苦しむことになるかもしれません。
しかし善意とは、あくまでもこちら側のものであって、相手にとってそれがありがたい行為になるかどうかは、本当にわからないものです。
善意では埋められない距離
善意のすれ違い。
それは未然に防げることなのでしょうか。
悪意がないからこそ、ほんの些細なズレが、相手にとって大きな傷になることもある、と私は思います。
「悪意がない」という残酷さ
知らず知らずのうちに、人は傷つけ合いながら生きている。
この事実は、とても苦しく、それでも目を背けられない現実だと感じました。
故に、自分を満たすための善意になっていないか?振り返る必要はあると思っています。
受け取る側にも、ありがたく受け取れることとそうでないことは、線引きできる権利があります。
相手の言いなりになるのではなく、自分の意見を伝える努力もどうやら必要そうです。
歪んだ愛の行き着く先|居場所を失った女性たち
物語は序盤から、とても重たい空気で始まります。
人を殺すシーンは決して明るいものではなく、何度か離脱しそうになりました。
居場所を失った少女たち
男に搾取された女性たちが、ずぶずぶと闇の中へ引きずり込まれていく描写は、とても衝撃的でした。
殺されてしまった茂美。
そして、人を殺してしまった美散。
このふたりは対極にいるように見えますが、決してそうではありません。
愛を知らないまま求めるということ
二人の背景には、共通して「家庭に居場所がなかった」という現実があります。
まっすぐな愛情を受け取れなかった彼女たち。
やがて、まやかしの愛を本物の愛と認識し、歪んだ形の愛を求めるようになります。
端から見たら「歪んだ愛だ」と思えても、愛されることに枯渇している子どもたちには、その違いがわからないのかもしれません。
愛されなかった記憶は消えない
- もしも、安心できる居場所があったなら。
- もしも、無条件に受け止めてもらえる存在があったなら。
そんな問いが、読み終えたあともずっと頭の中に残りました。
それでも人は人に救われる|アマリリス会の存在
重たいテーマでしたが、この作品には「救い」や「希望」も描かれていました。
私にとっては、それがとても印象的だったのと、町田その子さんの作品だなーと感じられて、とても嬉しかったです。
関係性の中で生まれる摩擦
人は人の中で傷つきながら生きている。
それは確かにひとつの側面です。
距離が近くなればなるほどに、関係性がぎくしゃくすることは多々あります。
「居場所」が持つ力
もう一つの側面として、人は人によって救われる、という事実もあります。
それは揺るぐことのない人間関係とかではなく、気軽に言葉を交わせる場所で良いと思うのです。
そんな場所がどれほど人を支えるのか、計り知れません。
他愛ない会話が人を救う
「アマリリス会」と名付けられた、子ども時代の女子たちのおしゃべりの時間。
そして大人になってからも、その関係が美散を救おうとする描写があります。
物語はそのあたりで終わっているのですが、明るい未来を想像できる終わり方で、読後感は良好でした。
印象に残った言葉
人は人で歪むんよ。
月とアマリリス より
その歪みを、どこまで拒めるかが自分自身の力。
私は無力でバカやった。
いつも歪みを受け入れることが愛やと思ってたし、そうすることで愛されようとしてたんよ。
自分の中の歪みと向き合う物語『月とアマリリス』
この作品は、誰かを断罪する物語ではありません。
むしろ、人の弱さや歪みを淡々と描きながら、「あなたはどう生きるのか」と問いかけてくる物語だと感じます。
人は簡単に傷つき、そして知らず知らずのうちに誰かを傷つけてしまう。
それでもなお、人は人と関わらずには生きていけません。
傷つけ合うこともあれば、救われることもある。
『月とアマリリス』は、そんな人間の不器用さと、わずかな希望を描いた作品でした。
読み終えたあとも、簡単には答えの出ない問いが残り続けます。
だからこそ、何度も振り返りたくなるのかもしれません。
気になる方はぜひ、『月とアマリリス』を手に取ってみてください。

最後までお読みくださりありがとうございました☆